2010年10月17日日曜日

掌の小説


46歳になってようやく読破した。理由についてはあえて書かないが、自分にとってはどうしても読むべき本であった。はじめてその存在を知り、この本を手にしたのは中学生の頃だったと記憶している。勢い込んで読み始めたが、残念ながら当時の自分には難解で、5~6編読んで挫折した。それから30年が経過し、今回満を持してひも解いてみた。”あぁ。”という感じであった。1編1編ゆっくりと、それこそ1日1編くらいのスピードで丹念に読んだ。おかげで数カ月かかってしまい、さすがに最初のころの情景がうすれてきた。しかし、目次を見直すと、何となく心に浮かんでくるくらいにはある。何と表現すべきなのだろう。明らかに川端の私生活そのものを描いたもの(愛犬安産)があると思えば、実験的スプラスティックな”顕微鏡的怪談”があったり。ただおおくの紙面が割かれているのはやはり男と女。戦争も見え隠れする。かといって声高に平和を論じるものでもない。全体としてのイメージはやはり少し靄か霞のかかった、どちらかと言うと肌寒く、やや湿った感じの耽美な雰囲気であろうか。どう考えても自身が中学生では感じ得ない領域である。あと30年して再読したらどんな印象なのだろうか。

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