2011年9月4日日曜日

がん薬物療法専門医

本日付の読売新聞の「病院の実力」にがん薬物療法専門医が掲載されていた。私はその記事の内容含め、かなり問題があると思われ、違和感を禁じえないので思わず筆を執った。この制度はいわゆる内科系の学会である日本臨床腫瘍学会の抗ガン化学療法の専門医制度のことであり、それなりの試験と評価を通じて認定されたしっかりした制度であることは間違いないであろう。この制度の根拠とするところは、これまで主に化学療法を行ってきた外科医が多忙のため十分な化学療法を行えない、よって薬物療法は内科を中心とする専門医のほうでやるようにしましょう、ということである。まさにアメリカの手法の追随である。それはそれで意義のあることで、患者側にもメリットが得られることは理解できる。言いたいのは、日本癌治療学会および癌治療認定医の存在が全く無視された形での報道であることである。つまり、今回の記事を一般の人が読めば、外科医側が行っているがん薬物療法はいかにも不十分で危険であるといった誤解を生まざるを得ない。特に外科の中でも専門化の進んだ泌尿器科のような領域では、永年尿路性器癌のそれこそ診断から手術はもちろんのこと化学療法は当然含む幅広い薬物療法、放射線療法、その後の進行がんの緩和ケアにいたるまですべてのトータルマネージメントを行っている。このような状況でこのがん薬物療法専門医がいくら化学療法に精通しているとは言っても泌尿器がんの治療を十分に行えるとはどう考えても思えない。同新聞社(だけにはとどまらないが)はこれまでも特に医療領域でやや偏ったとしか思わざるを得ない記事を多数掲載してきた経緯がある。今回の内容も外科系腫瘍医のがん薬物療法施行を半ば否定するものであり、同社記者と日本臨床腫瘍学会関係者との関係まであらぬ想像をしてしまう。1日でも早く、外科系腫瘍医の立場と現状を正しく評価した(これができるかどうかがかなり疑問ではあるが)記事を国民に発信するべきである。思いのすべてを上手く文章にできないのが歯がゆいが、同様の印象を持つ腫瘍外科医は少なくないはず。皆さんにも是非意見を出してほしい。

1 件のコメント:

  1. 矢原敏郎といいます。
    高校の同級生です。
    2007年にがん治療認定医を取りましたがあまり
    役に立っていないようです。よろしければ 
    micmanicmaniac@gmail.com
    にメールをいただければと存じます

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